建設業許可の営業所要件とは?自宅・賃貸・支店登記の注意点を解説

投稿日:2026/08/23

最終更新日:2026/08/23

建設業許可の営業所要件とは?自宅・賃貸・支店登記の注意点を解説

建設業許可を取得するには、建設業を営むための「営業所」が必要です。

ただし、法人登記をした住所や郵便物を受け取るだけの場所が、そのまま建設業法上の営業所として認められるわけではありません。実際に見積りや入札、請負契約などを行える環境があり、その実態を写真や書類で証明する必要があります。

個人事業主や新設法人が自宅を営業所にする場合、賃貸マンションや他社と同じフロアを使用する場合には、特に注意が必要です。

この記事では、建設業許可における営業所の定義と要件について、東京都の取扱いを中心に分かりやすく解説します。

※必要書類や審査方法は申請先によって異なります。実際の申請時には、管轄行政庁の最新の手引をご確認ください。

建設業許可における「営業所」とは

建設業法上の営業所とは、次のいずれかに該当する場所をいいます。

  • 本店または支店
  • 常時、建設工事の請負契約を締結する事務所
  • 他の営業所に対して請負契約に関する指導・監督を行うなど、建設業の営業に実質的に関与する事務所

「請負契約を締結する事務所」には、契約書へ押印する場所だけでなく、見積り、入札、契約条件の交渉など、請負契約の締結に関する実質的な行為を行う場所も含まれます。

一方、次のような場所は、原則として建設業法上の営業所には該当しません。

  • 登記上の所在地にすぎず、建設業の営業実態がない本店
  • 建設業に関係しない支店や店舗
  • 電話の取次ぎや郵便物の受領だけを行う連絡所
  • 工事現場に設置された現場事務所や作業所
  • 独立した執務・応接環境のないバーチャルオフィス

名称が「本店」「支店」「営業所」であるかではなく、そこで建設業の営業を実際に行っているかどうかが判断のポイントです。

届け出ていない事務所で契約行為はできる?

建設業許可上の営業所として届け出ていない事務所では、原則として、建設工事に関する見積り、入札、契約締結などの実質的な営業行為を行うことはできません。

複数の拠点で継続的に契約業務を行う場合は、それぞれが建設業法上の営業所に該当する可能性があります。

なお、営業所の所在地と工事現場の所在地は別の問題です。例えば東京都知事許可を受けた事業者でも、営業所の配置や技術者の配置などの法令上の要件を満たせば、東京都外を含む全国の工事を施工できます。

「東京都知事許可だから東京都内の工事しかできない」ということではありません。

知事許可と国土交通大臣許可の違い

許可区分は、工事現場の場所ではなく、建設業を営む営業所の所在地によって決まります。

  • 1つの都道府県内だけに営業所を設ける場合:都道府県知事許可
  • 2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合:国土交通大臣許可

例えば、東京都内だけに建設業の営業所がある場合は、全国で工事を施工する予定があっても東京都知事許可となります。

一方、東京都と神奈川県の両方に、見積りや契約などを行う営業所を設ける場合は、原則として国土交通大臣許可が必要です。

ただし、登記上の本店が東京都、実際に建設業を営む営業所が神奈川県というケースでは、登記上の本店が建設業の営業に実質的に関与しているかどうかも含めて判断されます。

東京都における営業所の主な確認ポイント

東京都の申請では、営業所について主に次の点が確認されます。

1.建設業の営業を行える実態がある

見積り、入札、契約、打合せなどを行うための執務スペースと応接スペースが必要です。

現在の東京都の手引では、営業所内部について、次の内容が分かる写真の提出が求められています。

  • 事務所内部の全体的な状況
  • 執務スペース
  • 応接スペース

室内は一方向だけでなく、概要が分かるよう複数の方向から撮影します。ブラインドやカーテンは開けた状態で撮影するものとされています。

2.営業所を使用する権限がある

営業所が登記上の所在地と異なる場合などには、その物件を営業所として使用できることを証明します。

自己所有物件の場合は、建物の登記事項証明書や固定資産評価証明書などが確認資料になります。

賃貸物件の場合は、原則として賃貸借契約書の写しが必要です。契約上の使用目的が「事業所用」または「店舗用」であることが確認されます。

使用目的が「住居用」となっている場合には、事業所としての使用を認める特約、または賃貸人の承諾書が必要になることがあります。

マンションの場合は、賃貸借契約だけでなく管理規約によって事業利用が制限されている可能性もあるため、申請前の確認が重要です。

3.外観・入口に商号が表示されている

東京都では、次のような外観写真の提出が求められます。

  • 営業所が入る建物の全景
  • 建物の入口付近
  • 建物入口を正面から撮影したもの
  • テナント表示
  • 商号を判読できる郵便受けや集合ポスト
  • 商号を掲示した事務所入口

従たる営業所については、会社名だけでなく営業所名も分かるように表示します。

写真上で文字が判読できない場合は確認資料として不十分になる可能性があるため、表示の大きさや撮影距離にも注意しましょう。

4.郵便番号・電話番号を確認できる

東京都では、営業所の郵便番号と電話番号を確認できる名刺・封筒などの提示が求められています。

旧来の運用を前提に「固定電話機が必須」と説明されることがありますが、現在公表されている東京都の営業所写真の撮影要領には、固定電話機を撮影する旨は明記されていません。

ただし、連絡先として使用できる電話番号は必要です。携帯電話を利用する場合を含め、申請時点の取扱いを事前に確認しておくと安心です。

5.許可取得後に建設業の許可票を掲示する

建設業許可を取得した後は、営業所の公衆の見やすい場所に、所定の建設業の許可票を掲示する必要があります。

許可票には、商号・名称、代表者氏名、許可番号、許可年月日、許可を受けた建設業の種類などを表示します。

自宅を建設業許可の営業所にできる?

自宅でも、営業所としての実態と使用権原を証明できれば、建設業許可の営業所として申請できる可能性があります。

ただし、東京都では営業所が住居と同じ建物内にある場合、通常の営業所写真に加えて、次の資料が求められます。

  • 間取り図(手書きでも可)
  • 建物入口から営業所までの動線が分かる写真
  • 営業所と居住スペースが明確に区分されていることが分かる写真

審査では、来客が居住スペースを通らずに営業所へ移動できるか、執務・応接スペースが生活空間と明確に分かれているかなどが確認されます。

リビングの一角へ机を置いただけの状態や、仕事用の場所を日常生活と共用している状態では、営業所としての独立性を説明することが難しくなる可能性があります。

他社と同じフロアでも申請できる?

他の法人や個人事業主と同じ階・室内を使用する場合でも、直ちに申請できないわけではありません。

ただし東京都では、次の資料によって、それぞれの営業所が明確に区分されていることを示す必要があります。

  • 間取り図
  • 入口から営業所までの動線写真
  • 他社のスペースと明確に区分されていることが分かる写真
  • 専用の執務スペース・応接スペース
  • 商号や営業所名の表示

フリーアドレス型のシェアオフィスや、利用者ごとの区画が明確でないコワーキングスペースは、営業所として認められない可能性があります。契約前に管轄行政庁へ確認することをおすすめします。

営業所に支店登記は必要?

建設業許可上の営業所と法人登記上の本店所在地が異なる場合でも、営業所について必ず支店登記をしなければならないわけではありません。

東京都の手引でも、登記上の所在地以外に事実上の営業所がある場合、建物の登記事項証明書、固定資産評価証明書、賃貸借契約書などによって営業所を確認する取扱いが示されています。

したがって、支店登記がなくても建設業許可を申請できるケースがあります。

ただし、次の点には注意が必要です。

  • その場所を事業所として使用できる権限があること
  • 営業所としての実態を写真で証明できること
  • 税務上・会社法上の届出が別途必要になる場合があること
  • 複数都道府県に建設業の営業所を設ける場合は、大臣許可の検討が必要になること

単純に「支店登記は一切不要」と判断するのではなく、営業所の実態と会社全体の拠点構成を確認することが重要です。

営業所ごとに営業所技術者等の配置が必要

建設業を営む営業所には、許可を受ける業種に対応した「営業所技術者等」を配置する必要があります。

従来「専任技術者」と呼ばれていた制度は、2024年12月の法改正に伴い「営業所技術者等」という名称に改められました。

営業所技術者等には常勤性と専任性が求められます。一定の条件を満たすテレワークは認められていますが、専任要件自体がなくなったわけではありません。

また、営業所から著しく離れ、常識的に通勤できない場所に居住している場合は、専任性が認められない可能性があります。

営業所写真で不備になりやすいポイント

申請前には、少なくとも次の項目を確認しましょう。

  • 建物の全景と入口を撮影している
  • 郵便受けやテナント表示で商号を確認できる
  • 事務所入口にも商号が掲示されている
  • 執務スペースと応接スペースが分かる
  • 室内を複数方向から撮影している
  • 写真の撮影年月を記載している
  • 自宅の場合は居住部分との区分が分かる
  • 他社と同居する場合は各社の区画が分かる
  • 賃貸借契約上、事業利用が認められている
  • 申請書、登記、賃貸借契約書の所在地表記に矛盾がない

営業所の準備を済ませてから相談すると、間取りや賃貸条件の問題が判明しても修正できないことがあります。物件の契約や内装工事を行う前に確認するのが安全です。

よくある質問

バーチャルオフィスでも建設業許可を取得できますか?

郵便物の受領や電話転送だけを行うバーチャルオフィスでは、通常、建設業の営業所として必要な実態を証明することは困難です。専用区画や執務・応接環境がある場合でも、個別の利用形態により判断されます。

自宅の住所と法人登記の住所が同じなら必ず認められますか?

登記があるだけでは足りません。事業利用できる権限、営業所としての実態、居住スペースとの区分などを写真と書類で証明する必要があります。

営業所を移転した場合は届出が必要ですか?

営業所の所在地を変更した場合は、原則として変更届が必要です。都道府県をまたぐ移転では、許可行政庁が変わる「許可換え新規」が必要になることもあります。

東京都知事許可で他県の工事を受注できますか?

営業所が東京都内だけであっても、工事の施工地域に制限はありません。必要な技術者を適切に配置するなど、関係法令を満たすことが前提です。

建設業許可の営業所要件は申請前に確認しましょう

建設業許可の営業所は、単に住所や登記があればよいものではありません。

実際に建設業の営業を行える設備と独立性があり、その場所を使用できる権限を写真や契約書などで証明する必要があります。特に自宅、住居用賃貸物件、シェアオフィス、他社と同居する事務所では、申請前の確認が重要です。

行政書士法人Deeでは、建設業許可・経営事項審査を中心に、建設業者様の行政手続きをサポートしています。

営業所として使用できる物件か分からない、写真の撮り方に不安がある、支店を追加したいといった場合も、お気軽にご相談ください。

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