建設業許可の常勤性とは?常勤役員等・営業所技術者等の要件と証明書類

投稿日:2026/08/23

最終更新日:2026/08/23

建設業許可の常勤性とは?常勤役員等・営業所技術者等の要件と証明書類

建設業許可では、一定の役割を担う人について「常勤性」が求められます。

特に重要なのが、建設業の経営体制を担う「常勤役員等」と、各営業所で技術面を担う「営業所技術者等」です。

ただし、建設業許可における常勤とは、単に正社員として雇用されていることや、毎日一日中営業所に滞在していることだけを意味するものではありません。

勤務実態、給与・役員報酬、社会保険、他社との兼務、営業所までの通勤状況などから、申請会社で継続的に職務へ従事していることを客観的に証明する必要があります。

この記事では、建設業許可における常勤性の考え方と証明方法について、東京都の取扱いを交えながら解説します。

※常勤性の確認資料や審査方法は、許可行政庁や申請者の状況によって異なります。実際の申請時には、管轄行政庁の最新情報をご確認ください。

建設業許可における常勤性とは

建設業許可における常勤とは、原則として、休日など勤務を要しない日を除き、一定の勤務計画に従って毎日所定の時間、その職務に従事している状態をいいます。

法人の役員であれば、常勤役員として会社の業務へ継続的に従事していることが必要です。従業員であれば、申請会社に継続して勤務し、営業所技術者等としての職務を遂行できる勤務実態が求められます。

次のような事情を総合的に確認して判断されます。

  • 申請会社における役職・雇用関係
  • 勤務日数と勤務時間
  • 給与または役員報酬の支給状況
  • 健康保険・厚生年金保険の加入状況
  • 住民税の特別徴収状況
  • 他社の役員や従業員との兼務状況
  • 営業所までの通勤距離・通勤時間
  • テレワーク時の勤務・連絡体制
  • 申請会社が人事権や指揮命令権を有しているか

書類上の肩書だけでなく、実際に申請会社で勤務しているかどうかが重要です。

常勤性が必要になる主な人

建設業許可では、主に次の人について常勤性が確認されます。

  • 常勤役員等
  • 常勤役員等を直接補佐する者
  • 営業所技術者等
  • 建設業法施行令第3条に規定する使用人

旧制度で「経営業務の管理責任者」と呼ばれていた役割は、現在の許可制度では「常勤役員等を含む経営管理体制」として整理されています。

また、従来「専任技術者」と呼ばれていた役割は、2024年12月の法改正により「営業所技術者等」という名称に変更されています。

常勤役員等に求められる常勤性

法人が建設業許可を取得する場合は、原則として、常勤の役員のうち少なくとも1人が所定の経営経験要件を満たす必要があります。

個人事業主の場合は、事業主本人または登記された支配人のうち、所定の要件を満たす人が対象です。

常勤役員等は、原則として主たる営業所において、建設業の経営業務を管理する職務へ継続的に従事します。

法人の場合、対象となる役員には、主に次のような人が含まれます。

  • 株式会社の取締役
  • 持分会社の業務を執行する社員
  • 指名委員会等設置会社の執行役
  • 法人格のある組合などの理事
  • 一定の権限委譲を受けた執行役員等

監査役、会計参与、監事などは、原則として常勤役員等の「役員」には含まれません。

単に登記上取締役となっているだけでは足りず、常勤役員としての勤務実態と報酬の支払いを証明する必要があります。

営業所技術者等に求められる常勤性・専任性

建設業を営む営業所には、許可を受ける業種に対応した資格または実務経験を持つ営業所技術者等を置く必要があります。

営業所技術者等には「常勤性」に加えて「専任性」も求められます。

専任とは、その営業所に常勤し、原則として営業所技術者等の職務へ専ら従事することです。

そのため、次のような人は原則として専任性が認められない可能性があります。

  • 他の営業所で営業所技術者等になっている人
  • 他社の常勤役員や常勤従業員になっている人
  • 他に個人事業を営み、その事業へ常時従事している人
  • 他の法令により、別の事務所で専任を求められている人
  • 営業所へ常識的に通勤できない場所に居住している人
  • 勤務時間が著しく短く、常勤と評価できない人

ただし、兼務先の事務所と建設業の営業所が同一である場合など、個別の条件によって兼務が認められるケースもあります。

営業所技術者等は現場技術者を兼務できる?

営業所技術者等は、原則として営業所でその職務へ専任するため、自由に工事現場の主任技術者や監理技術者を兼務できるわけではありません。

一方、一定の要件を満たす場合には、営業所技術者等が主任技術者または監理技術者を兼務できる制度が設けられています。

2024年12月13日施行の建設業法改正では、ICTの活用、営業所と工事現場の距離、工事金額、兼務する現場数などの条件を満たす場合について、営業所技術者等が一定の工事現場を兼務できる仕組みも整備されました。

兼務の可否は工事ごとに条件を確認する必要があるため、営業所技術者等を現場へ配置する前に検討することが重要です。

常勤とは営業所への「常駐」を意味する?

常勤性が求められるからといって、勤務時間中に一度も営業所を離れてはいけないという意味ではありません。

通常の営業活動、打合せ、現場確認など、職務上必要な外出まで禁止されているわけではありません。

また、現在は一定の条件を満たすテレワークも認められています。

したがって、「毎日、営業時間中は必ず営業所内にいなければならない」という旧来の常駐を前提とした説明は正確ではありません。

ただし、テレワークを行う場合でも、常勤性や専任性の要件がなくなるわけではありません。

テレワークでも常勤性は認められる?

常勤役員等や営業所技術者等がテレワークを行うことは、一定の条件を満たせば可能です。

営業所技術者等の場合は、主に次のような環境が必要です。

  • メールや業務システムを利用できる
  • 契約書、設計図書などの必要書類を確認できる
  • 所定の勤務時間中、電話などで常時連絡を取れる
  • 営業所で勤務する場合と同等に職務を遂行できる
  • 発注者などがテレワーク中の連絡先を把握できる
  • 必要に応じて営業所で対面対応できる
  • 営業所へ常識的に通勤できる場所で勤務している

営業所の従業員全員がテレワークを行い、一時的に営業所が無人になる場合でも、発注者などが連絡を取れる体制と、営業所で対面の打合せができる環境を確保する必要があります。

正社員でなければ常勤性は認められない?

「正社員」という雇用上の名称だけで常勤性が決まるわけではありません。

契約社員、出向社員などであっても、勤務時間、給与の支払い、人事権、指揮命令関係などから、申請会社に常勤し、営業所技術者等として専任していることを証明できれば、認められる可能性があります。

国土交通省の建設業許可事務ガイドラインでも、勤務状況、給与の支払い、人事権の状況などから専任性が認められる場合は、出向社員についても営業所技術者等として取り扱う考え方が示されています。

一方、次のような勤務形態では常勤性の証明が難しくなります。

  • 勤務日数や勤務時間が限定されたパート・アルバイト
  • 必要なときだけ業務を行う業務委託
  • 名義だけを借りている状態
  • 給与・役員報酬の支払いが確認できない状態
  • 複数社で常勤勤務している状態

雇用契約の名称ではなく、実際の勤務実態によって判断されることがポイントです。

他社の役員を兼務してもよい?

他社の非常勤役員を兼務しているだけで、直ちに常勤性が否定されるとは限りません。

ただし、他社の代表取締役や常勤役員になっている場合は、申請会社における常勤性・専任性が認められないのが原則です。

東京都では、常勤役員等について、他社の代表取締役等を兼ねる場合は原則として認めない取扱いが示されています。

もっとも、兼務先の会社が休眠状態にある場合や、兼務先に業務全般を管理する別の常勤取締役がいることを客観的に証明できる場合など、個別事情によって判断されることがあります。

他社の登記に名前が残っている場合は、申請前に必ず確認しましょう。

遠距離通勤でも常勤性は認められる?

住所やテレワークを行う場所が営業所から著しく離れており、常識的に通勤できない場合は、原則として常勤性・専任性が認められません。

東京都の手引では、居所から営業所までの通勤時間がおおむね片道2時間以上の場合、通勤定期券やETCの利用記録など、実際に通勤していることを確認できる資料を求める場合があるとされています。

住民票上の住所だけで判断されるとは限りませんが、遠距離に居住している場合は、実際の居所や通勤方法を客観的に説明できるようにしておく必要があります。

現在の常勤性を証明する主な書類

常勤性は、社会保険関係、税務関係、給与関係などの資料を組み合わせて証明します。

法人に勤務する役員・従業員の場合、確認資料の例として次のようなものがあります。

  • 健康保険・厚生年金保険の資格確認資料
  • 標準報酬月額決定通知書
  • 資格取得確認・標準報酬決定通知書
  • 住民税特別徴収税額通知書
  • 厚生年金保険の被保険者記録
  • 法人税確定申告書の役員報酬明細
  • 賃金台帳
  • 給与明細・役員報酬明細
  • 給与や役員報酬の入金記録
  • 出勤簿・タイムカード
  • 雇用契約書
  • 出向契約書・出向命令書

個人事業主の場合は、所得税確定申告書などが中心的な確認資料になります。

どれか1枚を提出すれば必ず常勤性が認められるわけではありません。申請者の年齢、役職、社会保険の加入状況、報酬額などに応じて、複数の資料が必要になることがあります。

健康保険へ加入していれば必ず認められる?

申請会社の健康保険・厚生年金保険への加入は、常勤性を示す有力な資料です。

ただし、社会保険へ加入しているという事実だけで、必ず常勤性が認められるわけではありません。

例えば、次のような場合には追加資料を求められる可能性があります。

  • 標準報酬月額や役員報酬が著しく低い
  • 他社からも報酬や給与を受け取っている
  • 他社の常勤役員として登記されている
  • 営業所から著しく離れた場所に居住している
  • 勤務実態を確認できない
  • 申請会社名が資料に記載されていない

反対に、後期高齢者など、制度上申請会社の健康保険へ加入できない人については、住民税の特別徴収資料、給与・役員報酬の支給資料、厚生年金関係資料など、別の書類によって常勤性を証明できる場合があります。

東京都では2026年7月から確認資料が変更

東京都では、2026年7月1日から、次の人に関する常勤性確認書類の取扱いが変更されています。

  • 常勤役員等
  • 営業所技術者等
  • 常勤役員等を直接補佐する者
  • 建設業法施行令第3条に規定する使用人

健康保険証の廃止や資格確認方法の変更などに伴い、以前使用できた資料がそのまま利用できない場合があります。

東京都へ申請する際は、過去の手引やインターネット上の記事だけで判断せず、東京都が公表している最新の「常勤性確認書類の取り扱い変更のお知らせ」を確認してください。

過去の常勤性を証明する必要があるケース

常勤性の証明は、申請時点の勤務状況だけに限られません。

常勤役員等の経営経験や営業所技術者等の実務経験を使って許可要件を満たす場合は、過去の経験期間について、その会社に在籍・常勤していたことの証明を求められる場合があります。

例えば、過去に勤務していた会社での10年間の実務経験を使い、営業所技術者等の要件を証明する場合には、一般に次の2つを分けて証明します。

  1. その期間に対象業種の工事へ従事していたこと
  2. その期間に証明会社で常勤していたこと

工事経験だけを証明できても、本人がその会社へ在籍していたことを確認できなければ、必要な経験年数として認められない可能性があります。

過去の常勤性を証明する主な資料

過去の在籍・常勤状況を確認する資料としては、次のようなものが考えられます。

  • 厚生年金保険の被保険者記録照会回答票
  • 健康保険・厚生年金保険の資格取得・喪失記録
  • 雇用保険の被保険者記録
  • 源泉徴収票
  • 住民税特別徴収税額通知書
  • 給与台帳・賃金台帳
  • 給与の振込記録
  • 在職証明書
  • 雇用契約書
  • 人事発令書
  • 法人税確定申告書の役員報酬明細
  • 登記事項証明書
  • 過去の建設業許可申請書・変更届

厚生年金の被保険者記録は、加入期間と勤務先を確認できるため、有力な証明資料になります。

ただし、過去の勤務先が社会保険へ加入していなかった場合や、会社が廃業して資料が残っていない場合には、証明が難しくなることがあります。

在職証明書だけで過去の常勤性を証明できる?

勤務先が作成した在職証明書だけでは、客観的な裏付けが不足すると判断される可能性があります。

特に、過去の勤務先と連絡が取れない場合、会社が解散している場合、社会保険へ加入していなかった場合は、当時の第三者資料をできるだけ集めることが重要です。

本人の申述や現在作成した証明書だけではなく、当時作成された次のような資料が有効です。

  • 年金・雇用保険の公的記録
  • 源泉徴収票
  • 給与振込が記録された通帳
  • 住民税の課税・納税資料
  • 当時の賃金台帳
  • 人事発令書

どの資料が認められるかは申請先によって異なるため、資料が不足する場合は、申請書を作成する前に相談することをおすすめします。

常勤性が認められにくい主なケース

次のようなケースでは、常勤性や専任性について追加説明・追加資料を求められる可能性があります。

  • 他社の代表取締役・常勤役員を兼ねている
  • 他社から給与や役員報酬を受け取っている
  • 個人事業を別に営んでいる
  • 営業所までの通勤時間が著しく長い
  • 役員報酬や給与が著しく低い
  • 社会保険の加入先が申請会社と異なる
  • 勤務日数や勤務時間が限定されている
  • 雇用・出向関係を確認できない
  • 過去の年金・給与記録が残っていない
  • 営業所技術者等が別の営業所や現場で専任となっている
  • 他法令上の専任者を別の事務所で兼ねている
  • 名義だけを借りており、勤務実態がない

名義貸しによって許可を取得することはできません。許可取得後に常勤性を欠いた場合も、速やかな変更手続きや後任者の確保が必要です。

よくある質問

常勤役員等と営業所技術者等は同じ人でもよい?

両方の要件を満たし、同じ営業所で勤務する場合は、常勤役員等と営業所技術者等を同一人物が兼ねられるケースがあります。

ただし、他の役職・現場との兼務状況も含めて確認が必要です。

代表取締役なら常勤性の証明は不要?

代表取締役として登記されていても、常勤性の証明は必要です。

登記は役員としての地位を示しますが、申請会社で毎日継続的に勤務していることや、適切な役員報酬を受け取っていることまで当然に証明するものではありません。

社会保険へ加入した直後でも申請できる?

資格取得通知などにより申請会社への加入と申請時点の在籍を確認できれば、申請できる可能性があります。

ただし、報酬・給与の支払い、雇用関係、他社での勤務状況などについて、追加資料を求められることがあります。

契約社員でも営業所技術者等になれる?

契約社員という名称だけで一律に否定されるわけではありません。

フルタイムで継続的に勤務し、申請会社の指揮命令下にあり、給与や社会保険などから常勤性・専任性を証明できれば、認められる可能性があります。

テレワーク中心でも営業所技術者等になれる?

ICTを利用して営業所勤務と同等の職務を遂行でき、勤務時間中に常時連絡を取れ、必要に応じて営業所へ出勤できるなどの条件を前提に、建設業許可制度が実情に追い付いていないこともあり、通い(リアル出勤)勤務中心で一部リモートワーク、ならば認められうると言えます

営業所へ常識的に通勤できない遠隔地からの完全なリモート勤務は、原則として認められません。

役員報酬はいくら以上必要?

建設業法で全国一律の最低額が定められているわけではありませんが、社会通念上の責任に応じた報酬額を求められます。

加えて生活状況や他社収入などと比べて著しく低額の場合は、常勤として勤務している実態に疑義が生じるため、追加資料や説明を求められることがあります。

常勤性は申請前に確認しましょう

建設業許可における常勤性は、正社員かどうか、健康保険へ加入しているかという一つの事情だけで決まるものではありません。

勤務時間、給与・役員報酬、社会保険、他社との兼務、通勤状況などを総合的に確認し、申請会社で継続して職務へ従事していることを証明する必要があります。

特に、他社役員との兼務、出向社員、遠距離通勤、後期高齢者、過去の社会保険未加入期間などがある場合は、申請前の資料確認が重要です。

行政書士法人Deeでは、建設業許可・経営事項審査を中心に、建設業者様の行政手続きをサポートしています。

常勤性を証明できるか分からない、過去の年金記録がない、他社役員との兼務があるといった場合も、お気軽にご相談ください。

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