特定建設業許可の更新時に潜むリスク
投稿日:2025/09/13
最終更新日:2025/09/13

1. 特定建設業許可の位置づけ
一定規模以上の工事を自社で元請として受注・管理するためには、特定建設業許可の取得が不可欠です。
一般建設業許可であれば請負金額に制限はありませんが、元請として一次下請けに4,500万円超(建築一式工事は7,000万円超)を発注する場合には特定建設業許可が必要となります。
この特定建設業許可は取得して終わりではなく、5年ごとに更新が義務付けられており、更新時にも取得時と同様の財産要件を満たす必要があります。
2. 特定建設業許可の財産要件
特定建設業許可を取得・更新するには、次の財務的基準を満たさなければなりません。
資本金:2,000万円以上
純資産額:4,000万円以上
流動比率:75%以上
大規模工事を元請として管理する前提で設けられた要件のため、相応のハードルが存在します。特に「純資産4,000万円の維持」は、経営状況の変化によって満たせなくなるリスクが高く、更新時の大きな課題となります。
3. 純資産維持の難しさと典型的な対応策
一度純資産が毀損すると、改善には時間と資金が必要です。現場からは、更新時に財産要件を満たせずに相談されるケースも少なくありません。
一般的な対応策としては、
株主や役員からの資金投入や
役員貸付金の資本振替等の会計処理
が挙げられます。
しかし、それだけでは限界があり、近年はM&Aや組織再編を戦略的に活用する事例も増えています。
4. M&A・組織再編を活用した解決例
(1)M&A+建設業許可承継制度
財務の健全な建設業者を買収し、その資産を取り込むことで不足分を補い、財産要件をクリアする方法です。
さらに、建設業許可承継制度を併用することで、既存の許可を新たな法人へスムーズに承継することが可能となります。
(2)組織再編+建設業許可承継制度
新設分割により新法人を設立し、自己資金や新株主からの出資によって資金を確保する手法です。
新法人が4,000万円の純資産を満たしたうえで、建設業許可承継制度を活用し、元の法人の許可を引き継ぎます。
これらの手法は、会社法・建設業法双方の知識が必要であり、会計士・司法書士・行政書士など専門家の連携が不可欠です。
5. 更新時の「落とし穴」
特定建設業許可の更新では、直近期の決算書で財産要件を満たしていることが必須です。
したがって、更新時直前に資金繰り対策をしても手遅れとなるケースが多く、数年前からの計画的準備が欠かせません。
特に純資産の改善は短期的に達成できない場合が多いため、早期に対策を検討することが肝要です。
6. 専門家と構築する「許可維持体制」
特定建設業許可を持つ会社は、毎年の**決算変更届(決算報告)**を都道府県に提出する義務があります。この機会を単なる作業として終えるのではなく、顧問会計士や行政書士が将来の更新を見据えて財務状況を分析し、先回りして改善策を提案することが理想です。
財産要件の定期チェックや純資産の維持・改善に向けた資本政策の立案、M&A・組織再編活用の可能性検討などこれらを組み込んだ「許可管理体制」を整えることが、安定的な事業継続につながります。
7. まとめ
特定建設業許可は大規模工事を担うための重要な資格ですが、その更新には財産要件という高いハードルが存在します。
許可を失えば、受注可能な工事の幅が大きく制限され、事業存続に直結するリスクとなります。
そのため、
数年前からの財務戦略の準備、
M&A・組織再編を視野に入れた柔軟な対応、
行政書士・会計士等の専門家との連携体制
が不可欠です。
行政書士法人Deeにご相談いただければ、建設業許可の維持・更新・承継について包括的にサポートし、貴社の事業継続を支えるお手伝いをいたします。ぜひ一度ご相談下さい。