建築一式工事とは?建設業許可が必要な金額・専門工事との違いを解説
投稿日:2026/08/23
最終更新日:2026/08/23
建築一式工事とは?建設業許可が必要な金額・専門工事との違いを解説
建設業許可には29の業種があり、その一つに「建築一式工事」があります。
建築一式工事は、新築工事や大規模な増改築工事など、複数の専門工事を総合的に企画・調整して建築物を完成させる工事です。
ただし、建築一式工事業の許可を持っていれば、内装工事や電気工事、管工事などを金額に関係なく単独で請け負えるわけではありません。
この記事では、建築一式工事の定義、建設業許可が必要となる金額、専門工事との違い、営業所技術者等の資格・実務経験について分かりやすく解説します。
※工事業種の判断や確認資料の取扱いは、工事内容や申請先によって異なります。実際の申請時には、管轄行政庁の最新情報をご確認ください。
建築一式工事とは
建築一式工事とは、国土交通省の告示上、次のように定義されています。
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事
一般的には、元請事業者が複数の専門工事業者をまとめ、工事全体の施工計画、工程、安全、品質などを総合的に管理して建築物を完成させる工事が該当します。
代表的な例としては、次のような工事が挙げられます。
- 戸建住宅や共同住宅の新築工事
- 店舗、事務所、倉庫、工場などの新築工事
- 建築物全体に関係する増築・改築工事
- 複数の専門工事を組み合わせ、総合的な企画・調整を必要とする大規模改修工事
一方、建築物に関する工事であっても、内装、屋根、塗装、防水など、一つの専門工事として施工できるものは、原則として該当する専門工事に分類されます。
工事の規模が大きいという理由だけで、建築一式工事になるわけではありません。
建築一式工事と建築工事業の違い
「建築一式工事」は建設工事の種類、「建築工事業」は建設業許可の業種名です。
- 建設工事の種類:建築一式工事
- 許可業種の名称:建築工事業
実務では「建築一式の許可」「建築一式工事業」と呼ばれることもありますが、許可申請上の正式な業種名は建築工事業です。
建築一式工事の許可が必要になる金額
建設業許可を受けていない事業者でも、「軽微な建設工事」だけを請け負う場合には建設業許可は必要ありません。
建築一式工事における軽微な建設工事は、次のいずれかに該当する工事です。
- 1件の請負代金が1,500万円未満の工事
- 請負代金にかかわらず、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事
ここでいう木造住宅とは、次の両方を満たす建築物です。
- 主要構造部が木造である
- 延べ面積の2分の1以上を居住の用に供している
したがって、建築一式工事業の許可が必要となるのは、原則として次のケースです。
| 工事の内容 | 許可の要否 |
|---|---|
| 請負代金が1,500万円未満 | 原則不要 |
| 150㎡未満の木造住宅工事 | 請負代金にかかわらず原則不要 |
| 150㎡以上の木造住宅工事で、請負代金が1,500万円以上 | 必要 |
| 木造住宅工事に該当しない工事で、請負代金が1,500万円以上 | 必要 |
例えば、延べ面積200㎡の木造住宅工事でも、請負代金が1,500万円未満であれば、建設業法上の軽微な建設工事に該当します。
「1,500万円以上または150㎡以上なら必ず許可が必要」と単純に判断しないよう注意しましょう。
なお、金額基準は税込みで判定します。
材料費を除けば1,500万円未満になる?
建設業許可の要否を判断する際、請負代金を不自然に分割したり、材料費を除外したりすることはできません。
注文者が材料を提供する場合には、契約上の請負代金に、その市場価格または市場価格と運送費を加えた金額で判断する必要があります。
また、同一の建設工事を正当な理由なく複数の契約に分割した場合は、各契約の合計額で許可の要否を判断します。
許可基準を下回らせることだけを目的とした契約分割は認められません。
建築確認が必要なら建築一式工事になる?
建築確認の有無は、建築一式工事に該当するかを判断する際の有力な資料になりますが、建築確認が必要だからという理由だけで、当然に建築一式工事になるとは限りません。
建築一式工事かどうかは、主に次の点を踏まえて総合的に判断されます。
- 建築物全体を建設する工事か
- 複数の専門工事を含む工事か
- 元請として総合的な企画・指導・調整を行うか
- 個別の専門工事として施工できる内容ではないか
- 工事の目的や契約内容がどのように定められているか
新築工事は一般に建築一式工事へ該当しますが、増改築や改修工事は、その名称だけで判断できません。
例えば「大規模改修工事」という契約名でも、実際の内容が塗装工事だけであれば、建築一式工事ではなく塗装工事に分類される可能性があります。
建築一式の許可があれば専門工事も請け負える?
建築一式工事業の許可は、建築関係のすべての専門工事を自由に請け負える「万能な許可」ではありません。
建築一式工事業の許可だけを持つ事業者が、次のような専門工事を単独で請け負う場合、その工事が税込み500万円以上であれば、原則として該当する専門工事の許可が必要です。
- 内装工事:内装仕上工事業
- 電気設備工事:電気工事業
- 給排水・空調設備工事:管工事業
- 屋根工事:屋根工事業
- 外壁塗装工事:塗装工事業
- 防水工事:防水工事業
- 解体工事:解体工事業
例えば、建築一式工事業の許可だけを持つ事業者が、税込み800万円の内装改修工事を単独で請け負うことはできません。原則として内装仕上工事業の許可が必要です。
一式工事に含まれる専門工事にも許可が必要?
元請として建物の新築工事などの建築一式工事を請け負い、その工事の中に500万円以上の内装工事や電気工事が含まれていても、請負契約全体が建築一式工事に該当する場合、元請事業者がそれぞれの専門工事業許可を必ず取得しなければならないわけではありません。
ただし、専門工事を自社で施工する場合には、その専門工事に対応する専門技術者を配置するなど、建設業法上の要件を満たす必要があります。
必要な専門技術者を配置できない場合は、該当する専門工事業の許可を持つ建設業者へ適法に下請負させる必要があります。
「一式工事として受注できること」と「すべての専門工事を自社で施工できること」は別の問題です。
建築一式工事業は一般許可と特定許可のどちらが必要?
発注者から直接工事を請け負う元請事業者が、1件の建築工事について、下請事業者へ発注する代金の総額が8,000万円以上となる場合は、原則として特定建設業の許可が必要です。
この8,000万円という基準は、元請事業者が下請事業者と締結する契約金額の合計で判断します。元請として受注した金額そのものの上限ではありません。
例えば、発注者から2億円の建築一式工事を受注しても、下請契約の総額が8,000万円未満であれば、請け負うことだけを理由に特定建設業許可が必要になるわけではありません。
なお、この金額基準は2025年2月1日から、従来の7,000万円から8,000万円へ引き上げられています。
建築一式工事業の営業所技術者等になれる人
建築一式工事業の許可を取得するには、営業所ごとに、建築工事業の要件を満たす営業所技術者等を置く必要があります。
従来「専任技術者」と呼ばれていた制度は、2024年12月の法改正により「営業所技術者等」という名称に改められました。
一般建設業許可では、主に次のような方法で要件を満たします。
- 建築工事業に対応する国家資格を保有している
- 指定学科を卒業し、所定の実務経験がある
- 建築一式工事について10年以上の実務経験がある
- 技術検定の第一次検定合格後、所定の実務経験がある
代表的な国家資格には、次のようなものがあります。
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士のうち「建築」
- 一級建築士
- 二級建築士
取得している資格や合格時期によって対象業種・必要な実務経験が異なる場合があるため、資格証だけで判断せず、申請先の資格一覧表を確認することが重要です。
特定建設業許可の場合は要件が異なり、建築工事業は指定建設業に該当するため、原則として一級の国家資格者等を配置する必要があります。
10年の実務経験で申請する場合の注意点
資格を使わず、10年以上の実務経験によって営業所技術者等の要件を証明することも制度上は可能です。
ただし、単に建設会社へ10年間勤務していたという事実だけでは足りません。原則として、建築一式工事の施工に関する技術上の経験を、申請先が求める資料によって証明する必要があります。
確認資料の例としては、次のようなものがあります。
- 工事請負契約書
- 注文書と請書
- 請求書と入金確認資料
- 工事内容や施工場所が分かる資料
- 建築確認済証や検査済証
- 在籍していたことを証明する資料
- 過去の建設業許可申請書や変更届
東京都では、実務経験の内容が建築一式工事であることを確認するため、契約資料に加えて建築確認関係書類などを求められる場合があります。
無許可期間の工事実績は証明に使える?
建設業許可を持たない事業者が自ら請け負った工事を実務経験として使用する場合、その工事が当時の法令上、許可不要の軽微な建設工事であったことを説明できなければなりません。
許可が必要な規模の工事を無許可で請け負っていた場合、その実績を許可申請の証明資料として使用することには重大な問題があります。
一方、許可業者の従業員として適法に建築一式工事の施工へ従事していた経験や、許可不要の範囲で適法に請け負った工事の経験は、必要資料をそろえることで証明できる可能性があります。
建築一式の実務経験証明が難しい理由
建築一式工事は、総合的な企画・指導・調整のもとで建築物を建設する工事です。
そのため、内装、塗装、防水、大工工事などの専門工事へ長期間従事していても、その経験がそのまま建築一式工事の経験として認められるとは限りません。
申請では、主に次の点が問題になります。
- 工事内容が建築一式工事に該当するか
- 申請者本人が施工に関する技術上の経験を有していたか
- 必要な経験期間を満たしているか
- 契約書や請求書などの資料が保存されているか
- 工事が適法に請け負われたものであるか
- 在籍期間と工事期間を客観的に確認できるか
申請先によって確認資料の種類や必要件数が異なるため、10年分の証明資料を集めてから相談するのではなく、手元にある資料で要件を満たせるかを早い段階で確認することをおすすめします。
よくある質問
リフォーム工事は建築一式工事になりますか?
工事内容によって異なります。複数の専門工事を組み合わせ、建築物全体について総合的な企画・調整を行う大規模な改修工事は、建築一式工事に該当する可能性があります。
一方、内装、塗装、防水、屋根など、個別の専門工事として施工できる工事は、通常、それぞれの専門工事に分類されます。
建築一式工事は元請工事だけですか?
法令上の定義に「元請」という言葉が直接含まれているわけではありませんが、工事全体を総合的に企画・指導・調整する性質から、一般的には元請として行う工事が想定されています。
下請として一部分だけを施工する場合は、その施工内容に応じた専門工事に分類されるのが通常です。
500万円以上の内装工事を建築一式として受注できますか?
工事の実態が内装工事だけであれば、契約名を「建築一式工事」や「改修工事」としても、建築一式工事にはなりません。税込み500万円以上を単独で請け負う場合は、原則として内装仕上工事業の許可が必要です。
建築確認済証がなければ実務経験を証明できませんか?
申請先と工事内容によって異なります。建築確認済証以外の契約書、注文書、請求書、図面などで工事内容を確認できる場合もあります。
ただし、申請先が建築確認関係書類を求める場合や、契約資料だけでは建築一式工事であることを確認できない場合は、証明が難しくなる可能性があります。
建築一式工事業の申請は事前の資料確認が重要です
建築一式工事業の許可は、建築関係の工事をすべて請け負える許可ではありません。
工事が建築一式工事に該当するか、専門工事の許可が必要か、一般許可と特定許可のどちらが必要かを、実際の契約内容に基づいて判断する必要があります。
また、実務経験によって営業所技術者等の要件を証明する場合は、過去の工事内容だけでなく、契約資料、在籍資料、建築確認関係書類などの確認が重要です。
行政書士法人Deeでは、建設業許可・経営事項審査を中心に、建設業者様の行政手続きをサポートしています。
建築一式工事に該当するか分からない、保有資格で申請できるか確認したい、実務経験資料がそろうか不安といった場合も、お気軽にご相談ください。
執筆者:行政書士法人Dee 代表行政書士 道原信治