建設業の企業集団制度とは?グループ会社の出向社員を主任技術者・監理技術者に配置する方法【2026年最新版】

投稿日:2026/10/01

最終更新日:2026/09/06

「親会社から出向している社員を監理技術者として配置できますか?」

「グループ会社の技術者を主任技術者として使うことはできますか?」

「在籍出向でも配置技術者になれますか?」

建設会社のグループ経営では、このようなご相談をいただくことがあります。

原則として、主任技術者・監理技術者には、工事を施工する建設業者との直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。

そのため、通常の在籍出向社員は、この「直接的な雇用関係」を満たさないことになります。

しかし、一定の企業グループについては、例外的に在籍出向社員を主任技術者・監理技術者等として配置できる**「企業集団制度」**が設けられています。

さらに2024年4月1日から制度が合理化され、従来よりもグループ企業間で技術者を活用しやすくなりました。

この記事では、建設業許可を専門的に取り扱う行政書士法人Deeが、企業集団制度について2026年現在の制度に基づいて解説します。

そもそも主任技術者・監理技術者とは?

建設業者は、請け負った建設工事を施工するとき、原則として工事現場に施工の技術上の管理をつかさどる主任技術者を配置する必要があります。

一方、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、一定額以上の下請契約を締結して施工する場合には、主任技術者ではなく監理技術者を配置します。

2025年2月1日から金額基準が改正されており、現在は元請として発注者から直接請け負った工事について、下請契約の合計額が、

  • 5,000万円以上
  • 建築一式工事の場合は8,000万円以上

となる場合に、監理技術者の配置が必要になります。

以前の「4,500万円・建築一式7,000万円」という基準から引き上げられていますので、古い情報には注意が必要です。

主任技術者・監理技術者には「直接的かつ恒常的な雇用関係」が必要

主任技術者・監理技術者等について重要なのが、工事を施工する建設業者との雇用関係です。

原則として、

「直接的かつ恒常的な雇用関係」

が求められます。

「直接的な雇用関係」とは、技術者と建設業者との間に、第三者が介入する余地のない雇用に関する権利義務関係が存在することをいいます。

そのため、原則として、

派遣社員や在籍出向社員を、そのまま出向先会社の主任技術者・監理技術者として配置することはできません。

そこで重要になるのが「企業集団制度」です。

企業集団制度とは?

企業集団制度とは、一定の要件を満たす企業グループ内の在籍出向社員について、例外的に出向先会社との間に直接的かつ恒常的な雇用関係があるものとして取り扱う制度です。

この制度を利用することで、一定の親会社・連結子会社等の間で出向している技術者を、出向先会社の主任技術者・監理技術者等として配置できる場合があります。

建設業界では技術者不足が大きな問題となっています。

そこで、一定の資本関係にある企業グループについては、グループ内の技術者をより柔軟に活用できるよう制度が整備されています。

2024年4月から企業集団制度が大きく変わった

企業集団制度については、2024年4月1日から取扱いが合理化されています。

特に大きなポイントは、一定の要件のもとで、

親会社と連結子会社の間だけではなく、同一の親会社を持つ連結子会社間の在籍出向社員についても対象となったこと

です。

例えば、

親会社A
↓
子会社B
子会社C

という企業グループがある場合、一定の要件を満たせば、B社からC社への在籍出向社員についても、C社の主任技術者・監理技術者等として配置できる可能性があります。

従来よりも企業グループ内の人材を活用しやすくなったといえます。

現在の企業集団制度には2つの考え方がある

現在の企業集団制度を理解するときは、大きく、

①3か月後等配置可能型

②即時配置可能型

という2つの取扱いを区別することが重要です。

「グループ会社だから出向したその日から必ず監理技術者になれる」という制度ではありません。

どちらの制度を利用するのかによって、出向期間や対象となる工事などの要件が異なります。

①3か月後等配置可能型とは?

2024年4月から設けられた新たな取扱いでは、一の親会社とその連結子会社から構成される企業集団について、親子間だけでなく連結子会社間の在籍出向社員も対象となります。

ただし、一定の場合には、出向先会社との間に3か月以上の雇用関係が必要になります。

国土交通省が示している代表的なケースとして、

  • 公共工事における親子間の出向社員(元請の場合)
  • 連結子会社間の出向社員

については、出向先会社と3か月以上の雇用関係が必要とされています。

したがって、

「来週から工事が始まるので、今日から子会社へ出向させて監理技術者にしたい」

というケースでは、この制度を利用できない可能性があります。

工事の受注予定がある場合には、技術者の出向時期まで逆算して検討することが重要です。

②即時配置可能型とは?

企業集団制度には、一定の要件を満たすことで、3か月の出向期間を待たずに配置できる即時配置可能型の取扱いもあります。

ただし、即時配置可能型は、単に親会社・子会社の関係にあれば自由に利用できるものではありません。

企業集団の構成や経営事項審査の状況、工事の下請関係など、別途要件があります。

そのため、

「親会社から子会社へ出向させれば、すぐ監理技術者として配置できる」

と判断するのは危険です。

実際に制度を利用する場合には、どちらの取扱いが利用できるのかを事前に確認する必要があります。

企業集団確認書が必要

企業集団制度を利用する場合には、企業グループが制度上の企業集団に該当することについて確認を受ける必要があります。

国土交通省から交付される企業集団確認書が重要な書類となります。

3か月後等配置可能型を利用する場合には、企業集団制度を利用していることを確認できるよう、例えば、

  • 出向元会社との雇用関係を確認できる資料
  • 出向契約書・出向協定書等
  • 国土交通省から交付された企業集団確認書
  • 施工体制台帳等

といった資料を備えておき、注文者から求められた場合には提出等ができる状態にしておく必要があります。

したがって、社内で出向辞令を出しただけで企業集団制度を利用できるわけではありません。

「100%子会社なら大丈夫」とは限らない

実務上注意したいのが、

「うちは100%子会社だから出向社員でも大丈夫ですよね?」

というケースです。

企業集団制度は、単純に株式を100%保有しているかだけで判断する制度ではありません。

企業集団制度上の親会社・連結子会社等の要件を満たしているかを確認する必要があります。

そのため、

「資本関係がある=企業集団制度が自動的に適用される」

という理解は避けた方がよいでしょう。

出向社員なら誰でも監理技術者になれるわけではない

企業集団制度は、あくまでも「雇用関係」に関する特例です。

したがって、制度を利用できたとしても、出向社員本人が主任技術者・監理技術者として必要な資格・実務経験等を満たしていなければ配置することはできません。

例えば監理技術者であれば、担当する建設工事の種類に応じた監理技術者資格を満たしていることなどが必要になります。

つまり、

①本人が技術者としての資格要件を満たす

ことと、

②企業集団制度によって雇用関係の要件を満たす

ことは別問題です。

両方を確認する必要があります。

公共工事では「3か月以上」の雇用関係にも注意

監理技術者等の「恒常的な雇用関係」については、公共工事で特に注意が必要です。

国・地方公共団体・公共法人等が発注する工事について、元請建設業者が専任で配置する主任技術者・監理技術者等には、入札申込日等以前に3か月以上の雇用関係が必要とされる場合があります。

そのため、公共工事への入札を予定している会社では、

「落札してから技術者を用意すればいい」

とは限りません。

経営事項審査・入札参加資格申請だけでなく、実際に配置する技術者の雇用期間まで含めてスケジュールを管理することが重要です。

企業集団制度を使う場合のチェックポイント

企業集団制度を検討する場合には、少なくとも次の事項を事前に確認します。

  • 親会社・子会社等の資本関係
  • 連結子会社に該当するか
  • 出向元会社と出向先会社
  • 出向開始日
  • 出向契約・出向協定の内容
  • 配置予定の工事が公共工事か民間工事か
  • 元請か下請か
  • 3か月以上の雇用関係が必要なケースか
  • 即時配置可能型を利用できるか
  • 出向者本人が主任技術者・監理技術者の資格要件を満たすか
  • 企業集団確認の手続きが完了しているか

特に公共工事を予定している場合には、受注後では間に合わないケースがあります。

企業集団制度はグループ会社の技術者不足対策として活用できる

企業集団制度を適切に活用できれば、

「親会社には有資格者がいるが子会社にはいない」

「グループ内で技術者の配置を最適化したい」

「子会社間で技術者を融通したい」

といった場合に有効な選択肢となります。

一方、建設業法では技術者の配置について厳格なルールが設けられているため、形式的に出向契約を締結すればよいという制度ではありません。

企業集団の要件、出向期間、工事内容、元請・下請、公共・民間、技術者本人の資格などを総合的に確認する必要があります。

建設業許可・企業集団制度なら行政書士法人Deeへ

行政書士法人Deeでは、建設業許可を専門分野の一つとして、建設会社の許認可・行政手続きをサポートしています。

建設業許可だけでなく、

  • 主任技術者・監理技術者の配置
  • 営業所技術者等の要件確認
  • 企業集団制度
  • グループ会社間の技術者出向
  • 経営事項審査
  • 入札参加資格申請
  • 建設業許可の新規・更新・業種追加
  • 決算変更届・各種変更届

など、建設会社の状況に応じた手続きについてご相談いただけます。

「親会社の技術者を子会社の現場に配置したい」

「子会社から別の子会社へ出向させたい」

「企業集団制度が使えるのかわからない」

「3か月待たずに配置できるのか確認したい」

といった場合には、工事を受注する前の段階からご相談ください。

執筆者
行政書士法人Dee
代表行政書士 道原信治